Walton_on_the_naze
 「ひみつの海」Secret Waterはイングランド東部の北海に面した入り江が舞台になっています。この入り江は物語に出てくるように 潮の満ち引きによって広い干潟が現れます。
 物語に出てくる町はランサムが描いた頃よりも住宅地が増えていますが、干潟の地形は地図で見ると本に出てくるのと全く同じようで変わっていないように思えます。ここは保護運動によって干潟の自然が残されていることをパンフレットなどで知りました。英国の人にとっては干潟の野鳥などの自然の観察に訪れる保護区らしいのですが、日本ではまったく知られていません。

 Walton-on-the-naze駅は鉄道の終点でした。駅前は静かな住宅地で、郵便ポストがあるくらいでお店もありません。歩き出すと、ここは夏の観光地らしく海岸に近づくにつれてみやげ物の店が多くなってきました。人通りもありました。
 ここでの宿はまだ決まっていませんでした。旅行社でも調べられず、予約の方法が見つけられないまま日本を出発してきたのです。それで、まず旅行案内所のある海岸のほうへ向かいます。海岸の近くにちいさな案内所がありました、ここのガラスの窓に今日の満潮などの時刻が張り付けてあったのですが、このときメモするのを忘れたのは失敗でした。案内所の係の人にお願いして あちこち電話をしてもらいましたが、今日の宿はもうないということです。困りました、夏のいちばん混み合う時期だったのでしょう。電話がつながらないけれど、直接、近くの小さなホテルに行ってみなさいと言われてたずねました。でも、ここにも空き部屋はありませんでした。
 いちおう覚悟はしてきていたのです。しかたありません、野宿することに決めて食料をスーパーで買い込みました。それから まず、ツバメ島へ紅海を横断して歩いて渡れるところの渡り場を見に行くことにしました。暑い住宅地の道を西へ歩いていきました。すぐ横を何台も車が通りすぎていきます。歩いてみるとなかなか地図上の距離より長く思えました。やがて、刈り入れ前の麦畑のはるか向こうに水面が見え、ツバメ島らしいのが見えてきました。
 歩道をたくさん歩いて、ようやくこの分岐を北へ進めば島へという表示のあるT字路につきました。ここからは両側を背の高い草に囲まれた土の道です。ここでは車も人にも出会いません。しばらく歩いていくと、13:20きっとここが紅海の渡り場だなと思える桟橋に到着しました。遠く向こうに低く見えているのがツバメ島でしょう。でも桟橋には海水が満ちています。浅い海の中には海草が少しあります。魚の姿は見えません。
 潮がいつになったら引いてくるのでしょうか。案内所に今日の満潮と干潮の時刻が書いてあったのをようやく思い出しました。そのときは宿の確保に気を取られ、メモをとる余裕がなかったのです。
コンクリート製の古い砲台と思われる八角形の台にあがって 少し待ってみることにします。まあ、きょうは日暮れまでにすることは、野宿の場所を見つけるだけです。このコンクリートの大きな土台はきっとドイツ軍の上陸に備えてつくられた戦争の遺物だと思われるものです。
dog 14:30 まだ潮は上がってきています。草の生えている位置からして、もう満ちるのも終わりなのかと期待したのに、その草まで水に沈んできました。桟橋の下の杭も十分に沈みました。15:00 とつぜん沖からカヌーがやってきました。桟橋の近くでUターンして去っていくのを見送ります。
15:15 くるまがやってきました。乗っていたのは親子3人です。黒い犬は降ろされると桟橋の上をはしゃぎ回って、やがて海へジャンプして飛び込みました。桟橋の周囲を泳いでいたかと思うと桟橋に上がってきて勢いをつけてまた海へ飛び込みます。これを3度もくり返してみんな大笑いです。
16:00 ここへ来たときに潮の位置を示しておいた空きカンが水面から現れました。いよいよです。コンクリートの斜面からタイヤのわだちが海へまっすぐ続いているように見えます。車が通れるような道が海の中にほんとに現れるのでしょうか。16:30 女の人と犬3匹が散歩にやってきました。テッサー、ハウディと名を呼ばれている犬たち。木の棒をくわえて歩いていきます。
16:45 自転車が2台やってきて、岸沿いを西へ去っていきました。
17:00 ほんとに海の中に道が現れてきました。まだ島までの中央までも届いていないのですが、車の通ったわだちの跡がずっと島のほうへ続いています。

Walton on the naze
17:35 もう行けるかな、待っていた紅海の横断を試みることにしましょう。運動靴をぬらすと このあとの野宿にも困るので、ぬいで裸足で歩くことにします。とてもやわらかい泥は暖かく踏み込むとぬるっとしています。海水はまだ残っていますが、どんどん引いていくのがわかります。ティティたちが横断の途中にとり取り残されたのとよく似た古い木の杭も過ぎました。島へのわだちの跡は泥ばかりではなく、場所によって混じったちいさな小石が足の裏に痛くて歩き続けられません。しばらくはがんばってみたのですが、痛くて断念。ツバメ島まであと半分近くの距離まで来れました、ゾウリでもあれば行けたのですが。
 横断をあきらめて駅に戻って朝まで過ごすことにしました。岸に沿って道を東へ進めば近道かなと思い歩き始めました。左側は海、右側は草原の間を進む海岸沿いの道です。歩いていくと、やがて道の正面は柵で終わってしまい 先へ進む道がなくなってしまいました。
 あれれ、どうしようかと地図を出して考えていると、畑でもない草原のところを遠くからトラクタがやってきました。だんだんこちらに近づいてきます。そばには黒い犬も2ひきついてきています。農作業でもないのに何をしてるのだろう。と見ていると 私のそばに近づいてトラクタが止まりました。不審者と思われたようでした。おじいさんがトラクタから、”Lost?”と聞かれました。なまりがきついけれど そのようです。駅に行くつもりなのですと話してわかってもらいました。でも、もときた道を引き返すしかないと言われました。
 地図上で道が書かれてあっても私有地のところは通り抜けられません。パブリックフットパスでなければ農場の間を近道でも行けないのはここのルールです。
 うんと遠回りになるもと来た道をとぼとぼ歩いて、もとの桟橋へ戻ってきました。暗くなるまでに早く夜を過ごすところを見つけなければなりません。
 薄暗くなった道を鉄道の駅まで戻って来ましたが、ベンチは待合室などの風よけがなく寒くて無理です。それでロンドン行きの列車に乗ることに。1車輌に1人ぐらいの乗客です。21:00 Colchester着 ここでまた北行きに乗り換えました。すでに日は沈んでしまって暗くなってます。ヘッドホンをつけているインド系のおじさんにたずねると、ノリッジ行きがこのホームでよいと親切に教えてもらいました。Anglia鉄道の車輌はクロスシートでテーブルもあり、多くの乗客で空いている席が少ないくらいです。
 ノリッジ駅ではトイレが閉鎖されてしまっていました。夜間は使えないのです。駅の外へ出て歩いてみましたが、にぎやかすぎる都会はトイレや朝まで過ごす場所もありません。駅の待合室も最終列車後は閉鎖されてしまいました。トイレのこともあってとにかく出発する列車に乗って、一つめの駅で降りることにします。この駅も待合室は閉まっていました。朝までホームのベンチしかないのです。


dawn

 ようやく 寒い夜が明けてきました。4時に空の青さが戻り始めました。次の目的地である北にあるノリッジ行きの列車は7時までありません。
 南へ向かう列車がやって来たので暖かさを求めて乗ることに。Ipswich駅で降りて待合い室に逃げ込みました、ここはガラスでおおわれ風は防げます。朝日が差し込んでほんの少し暖かいのです。

next day

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