
Arthur Ransome著「海へ出るつもりじゃなかった」に出てくる鬼号Goblinのモデルになった NancyBlackett号を作っています。
この1931年製造のカッターは アーサーランサムの所有艇であったとき、自身の作品の登場人物 ナンシイの名をつけたものです。この著作のためにランサム自身がNancyBlackett号に乗り、北海を横断してオランダへ航海しているそうです。
作り始めようとしたとき、まず図面が手に入りませんでした。しかも船の模型を作るのは初めてで、帆船模型の製作では1枚ずつ側板を貼っていくようですが 正確な図面もない状態では、それは難しすぎます。
それで 少しずつ船体を削りだして形を整えながら、自分なりのやり方で 製作を始めました。
The Nancy Blackett Trust のサイトにある写真と、ランサム自身が描いた著書のイラストが参考になりました。
Length of deck: 28ft6inch (8.68m) デッキ長
Beam : 8ft1inch(2.46m) 船体幅
Draft : 4ft6inch(1.53m) 喫水(船体の水面下にある部分の深さ)
船体の大きさで記載があるのはこれだけです。他の部分はこの数値をもとに写真から推定しました。製作はこれの50分の1サイズにしました。私にとって このくらいが作りやすく、できたものを飾るにもいい大きさだからです。
船体は木材(米松集成材)の板を重ねてブロックにしたものを 削りだして作ることにしました。
あちこち調べたのですが、はじめ 船体の断面のようすがわかりませんでした。
水面上に現れていない喫水ラインより下の正確な形、とくに断面の形の写っている写真や見つからず、
キールの部分が長いのか、船体の底がずっと伸びているのか わからなかったのです。
いろいろ探していくうちに 断面の形がわかる写真を 船体ができあがったころに見つけました。
そのため、途中まで作っていた船体をもう一度作り直すことになりました。
できた船体には色を塗りました。
アクリル塗料を使ったのは、水で筆を洗えるし、いちど乾けばぬれても大丈夫だからです。ただし、完全に乾いてべたつきがなくなるまでには思っていたより時間がかかりました。
砥の粉で目止めしたあと、白色で全体を塗りました。
喫水線より下は赤色です。買ってきたアクリル塗料の赤は派手すぎなので、ポスターカラーを混ぜて渋い色にしました。
写真を参考にしながら、喫水のラインを決めるのも難しいものです。
キャビンなどはニス色がきれいです。ここは同じシェララックニス仕上げにしました。

船体の左舷前部に丸いポートホール(舷窓)があります。これを何で作るか、鳩目や真鍮パイプなどいろいろ検討してみました。探しているうちに小さなワッシャーを見つけて、これを使うことにしました。外径5mmの真鍮ワッシャーで内径は2.6mmでした。内径を3mmまで大きく削って使いました。
船室のポートホールも同じ大きさだと思われます。操舵室から船室内の羅針盤や時計を見るためのポートホールはちょっと縁取りが太いようです。

ラダーの形も正確にはわからなかったので、この時代の他のカッターの写真などから推測しました。桧棒を削ってラダーを作りました。ヒンジは0.5mmのピアノ線と0.2mmの銅板です。
セールの材料はノムラテーラー(京都四条)で買ってきました。色は赤色というより赤レンガの色というほうがふさわしい色です。
ブロード綿30cm幅で切ってもらって174yenでした。はじめに買った布は色が合わなくて、もう一度ノムラテーラーへ買い直しに行きました。
マストは竹で作るのが丈夫です。太さは2.8mmくらいです。この大きさにやや太い竹ひごを削りました。
ボースプリットの太さは2.0mmくらいでしょうか。

船室の構造がわかってくると、船体内部をもっと実物どうりの構造にしたくなってきました。でも、ある程度形ができてます。船体を作り直すのはたいへんなので、今回はこのまま作り上げようと思っています。
NancyBlackett号をつくるのと平行して、原書をゆっくり読み進めています。普通に読んだときに気づかなかった、船内やデッキのようすがほんとによくわかります。

・ 船体左舷のポートホールの位置は船内のちいさな部屋になっているところに、この窓から光を入れています。この窓は右舷側にはありません。また、船室のポートホールは船室内で立ち上がったときにちょうど目の高さになっています。
・ 操舵室と船室の間は嵐のときに完全に閉め切れる扉を持っています。また、扉を閉めない状態でも操舵室に入り込んだ水が船室へと流れ込まないように入り口が高くなっています。
・ デッキは平面ではなく、排水のためふくらみを持たせてあります。さらに前部ほど高くなっていて、難しい曲面に仕上がっています。
・ 船室などは木材にニス色がきれいです。私がコニストン湖で借りたボートJENNYもニスの色がきれいでした。ウインダミア湖を渡るときに乗せてもらった連絡船も木造でニスがとてもきれいな色でした。 それできれいなニスの色を絵の具の色でなく、 本物と同じようにシェラックニスを塗ることで、ぴったり同じニスの色とつやにできました。
・ お湯を沸かすコンロが船室へ入る階段の横、右舷に設置されています。流しは左舷にあり、このそばには羅針盤があり スキッパーから窓を通して見えるようになっています。
・ 寝だなに使えるところは船体前部と後部の2カ所に分かれています、これは間に船体の構造を補強するための仕切りなのだろうと思われます。また、船室の高さがひとの背丈に合わせて作られていること、そのために操舵室からの階段のところは天井部分が開いて頭があたらないようになっています。
・水を入れておくタンクは操舵室の下だと書かれてありました。エンジンより後ろ側のあたりです。
・エンジンは船室への階段の下、重いエンジンは水面より低い位置のはずです。
・メインセールはマストフープによってマストとつながっています。現代のヨットにはない構造です。ジョンがクロストリーズに登るときに足場に使ったものです。
・船室最前部のスペースにはトイレだと思われます。1930年代の頃のようすはどのようだったのか、資料が見つかりません。
・船室の上には救命具が備え付けられています。現在のNancyBlackett号では救命ボートが収納されている箱がありますが、ランサムの挿絵ではこのような救命具です。板材を丸く切り抜いて作りました。
・前部デッキにあるハッチは船室から出入りできます。デッキが水をかぶっても船室には水が入ってこないようになっています。ここは火災や浸水のときの非常口としても考えられています。

これらを作っていくにはNancy Blackett号が どうなっているのか調べなくてはいけないのですが、調べて見るとそれぞれ発見があって ひとの動きや大きさを考えた、なるほどと思える構造になっていることがわかりました。本を読んだだけでは気づかずにいたジョンやスーザンたちの船上での動きがとてもよく見えてきます。
また、構造の疑問点を解決してくれるのが ランサム自身のイラストです。鬼号は「海へ出るつもりじゃなかった」だけでなく、「ひみつの海」にも登場してます。船体や船室のつくり、クロストリーズなどランサム自身のイラストが 写真ではわかりにくかったところを解決してくれます。
この図は写真などを参考にして構造を描いてみたものです。わからない部分などは推定がたくさん入っています。






